駿府城に天守がないのは、1635年(寛永12年)の火災で焼失し、その後、江戸時代には再建されなかったからです。さらに、残っていた天守台も1896年(明治29年)に取り壊されました。
「天守が焼けた」と「天守台が取り壊された」。似た話に聞こえますが、間には260年以上もの時間があります。
徳川家康が大御所として暮らした駿府城。その天守は、明治まで建っていたわけではないのですね。では、なぜ建て直されず、土台まで姿を変えたのでしょうか。
悩む庶民家康のお城なのに、天守を再建しなかったの?

そこが気になるところですよね。まずは、天守と天守台が、それぞれいつなくなったのかを分けてみましょう。
天守が焼けたのは1635年。お城の歴史はそこで終わらない
大御所・家康のために大きく造り直された駿府城では、1610年(慶長15年)に天守が完成しました。その天守を失うことになったのが、1635年の火災です。
静岡市歴史文化課の『駿府城跡天守台 発掘調査NAVI vol.4』(1ページ)によると、城の外で起きた火事が燃え移り、天守や櫓などが焼けました。

ただ、天守がなくなっても、駿府城そのものが終わったわけではありません。 同じ資料には、1638年(寛永15年)に御殿や櫓などが再建されたことが記されています。天守は、その再建に含まれませんでした。
城の建物がすべて元に戻ったわけでも、すべて放置されたわけでもない。そこに、駿府城のその後を考える手がかりがあります。
現在の静岡市の駿府城跡の解説でも、火災で建物の大半を失った後、櫓や門は再建された一方、天守は再建されなかったと説明されています。
なぜ天守だけ、建て直さなかったの?
一度は造り上げた大きな天守。それを、火事の後には造り直さない。建物を見慣れた私たちには、少し不思議に感じられます。
静岡市の『発掘調査NAVI vol.4』は、その背景を徳川の支配が安定し、戦いや権威の象徴としての天守を必要としない、天下泰平の世になったことの表れと捉えています。
ここで気をつけたいのは、これは市の解説が示す歴史の読み方だということです。「誰かがこの理由で再建を禁じた」とする命令や、「予算が足りなかった」という単一の原因を、この資料が示しているわけではありません。
確かめられるのは、天守は再建されず、ほかの建物や天守台はその後も災害のたびに修復・再建されていった、という違いです。

城を使い続けるには、どの建物を戻すかも考えねばならぬのじゃ。天守がない時代にも、城の役割は続いておったのじゃな。
天守のない姿は、単に「完成していないお城」ではなかった。その時代の城の使われ方が表れていると考えると、空いた場所にも歴史が見えてきます。
1896年には、天守を支えていた「天守台」も取り壊された
ここで、天守と天守台の違いを整理しておきましょう。
- 天守:屋根や壁を持つ建物。
- 天守台:その建物を支えていた、石垣などで造られた土台。

駿府城では、1635年に天守が焼けた後も、天守台は残っていました。その天守台に大きな変化が起きたのが、1896年です。
静岡市の解説によると、陸軍歩兵第34連隊を迎える際に天守台を取り壊し、その土砂で本丸堀を埋め立てました。城跡を軍の用地として使うため、土地そのものに手が加えられたのです。
悩む庶民じゃあ、「明治に駿府城の天守を壊した」では、時代が違ってしまうんだね。

はい。天守は1635年の火災、天守台は1896年の取り壊し。この二つを分けると、すっとつながります。
同じ「なくなった」でも、建物が焼けた出来事と、残った土台を取り崩した出来事は別でした。
取り壊したら何も残らない?発掘で見えてきた駿府城
ところが、天守台を取り壊したからといって、痕跡まで消え去ったわけではありません。
静岡市は2016年8月から2020年3月まで、天守台跡で掘削による調査を行いました。その後は出土品の整理を進め、2022年3月に報告書を刊行しています。調査では、家康が大御所だった時期の天守台の石垣などが確認されています。市の発掘調査の概要と『発掘調査NAVI vol.4』(2ページ)で、その成果が紹介されています。
地上にそびえる建物がなくても、石垣や地面の下の痕跡から、その場所にあった城を知ることができる。見えないと思っていた歴史が、発掘によって形を現すのは、わくわくするところです。
駿府城の天守がない理由をたどると、火災で建物を失った江戸時代、天守台を取り壊した明治、城の痕跡を調べる現代へと、話がつながりました。
「立派な天守があったら」と思う一方で、天守のない景色だからこそ、その後に何が起きたのかを知りたくなりますね。
江戸城も、火災後に天守が再建されなかったお城です。それぞれの城がたどった経緯を比べてみたい方は、こちらへどうぞ。

天守のある城と、石垣や堀から歴史をたどる城。本をめくりながら、それぞれの見どころを比べてみるのも面白いものです。次の城歩きにつながるガイドと、城の仕組みを学ぶ図解の本を紹介します。
広告:以下の書籍紹介にはアフィリエイトリンクを含みます。
書籍の版について:下で紹介する『カラー図解 城の攻め方・つくり方』は2017年版です。32ページを増補した2025年版『オールカラー徹底図解 城の攻め方・つくり方』も刊行されています。購入時は、版と新品・中古の区分をご確認ください。
お城巡りに持っていくべき本の紹介
お城巡りにガイドブックは必須です!持っていくだけで何倍も魅力が引き出せます!
持って行って良かったおすすめの本を紹介します!
お城初級者向け:日本100名城公式ガイドブック
専門的な知識はあまりなく、ただ単にお城いってみたい!全国の有名なお城の概要を知りたい!
という方にはコチラ!概要レベルの紹介で、見どころなどの情報がギュッと詰まっています。
さらには日本の他の名城も紹介しているので、次に次にお城に行きたくなる情報も満載!
お城中上級者向け:城の攻め方・つくり方
こちらは、ある程度お城をめぐって、天守の美しさだけではなく、内部構造や城郭、土塁、石垣、門、櫓などお城を成している構造物に着目している方向けです!
より深くお城に対しての知的好奇心がわく内容になっており、これを見ながら巡ると、着眼点が「お城っていいな~」から「このお城を攻めるには/守るにはどうすればいい!?」と変わってきます!おすすめです!
本文の図は、年代や建物と土台の関係を説明するために城なびがAIで制作した模式図です。駿府城の天守の外観や層数、工事・発掘の現場を復元したものではありません。史実は本文中の静岡市の資料に基づき、2026年9月13日に確認しました。


コメント