お城の階段が急になる理由の一つは、高い所まで上る階段を、限られた長さに収めていることです。 例えば松本城では、上る高さに対して階段を置く長さが短いことが、急さの理由として公式に説明されています。
昔の木造天守に入ると、目の前の階段を見て「これ、はしごみたい!」と感じることがあります。なぜ、もっと緩やかにしなかったのでしょうか。
この記事では、天守の中にある木の階段を取り上げます。城の外の石段ではなく、建物の中で、上の階へ進むための階段の話です。
悩む庶民急なのは、攻めてきた敵を登らせないためですか?

戦いに備えた建物という背景はあります。ただ、松本城の解説を読むと、柱の間に階段をどう収めるか、という理由も見えてきます。
同じ高さを上るなら、短い階段ほど急になる
まず、二つの階段を横から見てみましょう。下の図では、下の床から上の床までの高さをそろえています。

左は、床の上で使う長さが短い階段。右は、より長い距離を使って上がる階段です。同じ高さまで上る場合、横に使える距離が短いほど、傾きは急になります。
緩やかにするには、階段を長くしたり、途中で折り返したりする場所が必要です。建物のどこに柱があるか、階段をどの範囲に収めるかが、上り下りのしやすさにも関わってきます。
これは高さと長さの基本的な関係を示す図です。すべての城の階段が、同じ設計の理由で急になったことを示すものではありません。次に、理由が公式に説明されている松本城を見てみましょう。
松本城の階段は約61度。柱の間に収めると急になる
松本城の大天守で、4階から5階へ上がる階段は約61度。公式解説では、城内で最も急な階段とされています。
同じ解説によると、4階の床から天井までは4メートル弱あります。その高さのところに、柱と柱の間一つ分を使って階段をかけているため、急になるのです。
※「4メートル弱」は床から天井までの高さで、上下の床面の高低差とは異なります。

上の階へ届く高さは必要じゃ。そのうえで、横に使える長さが短ければ、急になるわけじゃな。
出典:国宝松本城「大天守」
でも、一つ上の階段は同じ急さではない
面白いのは、同じ松本城の中でも、階段のつくりが違うことです。
5階から6階への階段は、柱と柱の間二つ分を使い、途中に踊り場があります。 踊り場とは、階段の途中に設けた平らな部分のことです。

| 松本城大天守の階段 | 公式解説にある、階段を置く範囲と特徴 |
|---|---|
| 4階から5階 | 柱の間一つ分。約61度で、松本城で最も急 |
| 5階から6階 | 柱の間二つ分。途中に踊り場があり、4階からの階段ほど急ではない |
5階は、床から天井までの高さが4階より高いにもかかわらず、階段は4階からのものほど急ではないと説明されています。高さだけでなく、階段のために使える長さや配置が大切だと分かる例です。
図は、その違いを理解するための模式図です。柱の寸法、段数、実際の階段の形を正確に写した図ではありません。
出典:国宝松本城「大天守」
松本城の「外から見ると5重、中に入ると6階」という別の不思議は、こちらの記事で紹介しています。

「敵を防ぐために急にした」だけで説明できる?
天守が戦いに備えた建物であることは、階段を考えるうえでも大切な背景です。松本城の公式FAQでも、戦闘のために設計された建物であり、内部の階段が狭く急で、段差も大きいことが案内されています。
一方で、大天守の詳しい解説は、急な階段について高さと柱の間隔という、建物の具体的な条件を挙げています。
そのため、松本城の説明を「敵を転ばせるためだけに急にした」とまとめてしまうと、確認できる理由を取りこぼします。まして、松本城の例だけで、日本中の城の階段の理由を一つに決めることはできません。
「戦いに備えた建物だった」という背景と、「この階段はどこに、どれくらいの長さで収まっているか」というつくり。その両方を見ていくと、急さの理由に近づけます。
城で階段を見るなら、上った先の床から
天守を見学するときは、階段そのものに加え、周囲の柱や、途中の平らな場所にも目を向けてみてください。同じ建物の中でも、階ごとの違いが見つかるかもしれません。
ただし、急な階段の途中で立ち止まって見上げたり、写真を撮ろうとしたりするのは避けましょう。現地の案内に従って上り下りし、通行の妨げにならない床の上から見るのがよい方法です。
「急だった!」という感想の先に、「この高さへ、この長さで上がるんだ」という発見が加わる。すると、階段も天守のつくりを知る見どころになります。
木造天守の見学の様子や回り方は、犬山城の記事も参考にしてください。

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参考資料
- 国宝松本城「大天守」:4階・5階の高さ、柱の間と階段、約61度の傾斜、踊り場。
- 国宝松本城「よくあるご質問」:天守の性格と、階段の狭さ・急さに関する案内。
資料確認日:2026年9月23日。図は説明のための模式図で、実測図ではありません。吹き出しの会話は説明のための創作です。


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