五稜郭が星形なのは、外へ張り出した部分から隣の壁際を横方向に守りやすくするためです。 壁に近づく相手を、正面だけでなく横からも狙えるようにしたのです。
かっこいいだけじゃないんだ! あのとがった角には、ちゃんと守りの役目がある。上から見た星の美しさと、城を守る工夫がつながるところが面白いんです。
では、角があると何が変わるのでしょう。先端だけでなく、二つの角の間を見てみましょう。
角を突き出すと、隣の壁際を横から守れる
まっすぐな壁の上から守る場合と、その壁より外へ張り出した場所から守る場合を比べてみましょう。外へ出た位置からなら、隣の壁の前にいる相手を横方向から狙えます。
この張り出した防御施設を、稜堡(りょうほ)と呼びます。函館市は、突き出た稜堡を利用することで、正面と側面から攻撃できると説明しています。
悩む庶民あのとんがりの先で、敵を待っていればいいの?

城を守る側なら、先端だけ見てはおれん。隣の壁へ近づく相手も見たいのじゃ。角の脇からなら、横方向に狙えるぞ。
次の図では、二つの突出部の間にある壁と、その外側の水面に注目してください。突出部から横へ目を向けると、間の壁際を守れる関係が見えてきます。

なるほど、角の「先」だけじゃなく「脇」にも役目があるんだ! 壁の前を別の角度からも守れる。星の輪郭が、ただの形から守りの仕組みに見えてきます。函館市公式観光サイトも、防御側の死角が少ないことを利点として紹介しています。
ただし、死角が完全になくなるわけではありません。土塁の高さや形、備えた武器なども守りに関わります。
出典:函館市公式観光サイト「特別史跡五稜郭跡」星形と防御、函館市「五稜郭内の建物と遺構」稜堡の正面・側面からの防御
5つの張り出しをつなぐと、星形の外周になる
この守りの工夫を、城全体で見てみましょう。五稜郭には外側へ張り出す稜堡が5つあり、その間を土塁や石垣がつないでいます。5つの張り出しと、間の壁がつくる輪郭が星形なのです。
下の図では、1〜5の角と、その間で内側へ引っ込んでいる壁を見比べてください。さっきの「横から守る」が、ここにも、あそこにも! 一つの角で分かった工夫が、城全体の形につながります。

函館市によると、この姿はヨーロッパの城塞都市をヒントにしています。なお、実物には正面入口を守る半月堡(はんげつほ)という別の土塁もあります。上の模式図では省略していますが、星形本体の「6つ目の角」ではありません。図の番号も、角を数えるための目印です。
出典:函館市「五稜郭の概要」形・土塁・堀、函館市公式観光サイト「歴史の舞台、五稜郭探訪」半月堡
守ろうとしたのは、もともと「奉行所」だった
五稜郭と聞くと、土方歳三や箱館戦争を思い浮かべるかもしれません。けれど、築造の出発点は、その戦いより前にあります。
五稜郭は、箱館奉行所を内陸へ移す計画の中で造られました。箱館奉行は、外国との交渉や蝦夷地の防衛などを担う幕府の役職です。港近くの役所は、艦船から狙われやすいことなどが問題となり、移転先の役所を土塁と堀で囲む計画が進められました。
設計を担当したのは、蘭学者の武田斐三郎(たけだあやさぶろう)。1857年に工事が始まり、1864年には奉行所が移転しています。
悩む庶民えっ、最初から土方歳三たちのお城だったわけじゃないの?

そうなんだ。まず奉行所を守るために造られて、その後に旧幕府軍の拠点になったんだよ。「造った理由」と「後に起きた戦い」は分けて見たいね。
出典:五稜郭タワー「五稜郭の歴史」箱館御役所の誕生、函館市「五稜郭の歴史(築造から大政奉還)」
星形でも、箱館戦争には勝てなかった
1868年、榎本武揚らの旧幕府軍が五稜郭を占拠し、拠点とします。しかし翌1869年には新政府軍の攻撃を受け、最後には降伏して五稜郭を明け渡しました。

函館市の解説では、新政府軍は港内の艦船から五稜郭へ砲撃しています。近くまで迫る相手への守りの工夫があっても、離れた場所から飛んでくる砲弾まで防ぎ切れるとは限りません。 星形という形だけで、戦いの結果が決まるわけではなかったのです。
悩む庶民こんなに考えて造った星形でも、無敵じゃなかったんだ……。

城を預かるなら、近くの壁際だけでなく、遠くからの攻撃にも目を配らねばならん。形の工夫だけで安心はできぬのじゃ。
工夫を知ると強そうに見える。けれど、形だけでは守り切れない。その両方が分かると、星形を見る目も少し変わります。
出典:函館市「五稜郭の歴史(箱館戦争から現在)」占拠・艦砲射撃・降伏
上から星を見たら、地上では角の脇を見る
五稜郭タワーからは星形の全体を見渡せます。一方、郭内では土塁と堀の近さや、角の張り出し方が見どころになります。上から全体をつかみ、地上で一つの角を確かめると、二つの景色がつながります。
「この角から、隣の壁はどう見えるんだろう?」。そんな問いを持つだけで、きれいな星を眺める楽しみに、守る側の目線が加わります。
中央の箱館奉行所も、現在の建物は2010年に部分復元されたものです。星形の外周と、内側に置かれた役所を一緒に見ると、ここが何を守ろうとしていた場所なのかが伝わってきます。
出典:五稜郭タワー「施設案内」、函館市公式観光サイト「歴史の舞台、五稜郭探訪」箱館奉行所・土塁
川と崖を利用した上田城も、城の外側を見ると守り方が見えてくる城です。

本文・出典の確認日:2026年9月8日。表紙・本文図は城なび制作(AI生成)。仕組みを伝えるための模式的なイメージで、建物・配置・戦闘の正確な復元図ではありません。
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