松本城や名古屋城では、殿様の暮らしや政務の場は、天守とは別の「御殿」にありました。 天守の一番上が殿様の家、というわけではないのです。
お城で一番目立つ建物が、殿様の家とは限らないんだ! 高い天守を見上げたあと、その脇へ目を向けると、暮らしの場所が見えてきます。
松本城や名古屋城の公式資料には、城主の居間や寝間、家臣が仕事をする部屋が登場します。御殿(ごてん)の中には、生活と政治を支える部屋がそろっていたんですね。
でも、天守の中にも「御座所」という城主の居場所がある。えっ、やっぱり住んでいたの? ここは日々の住まいと、天守に入ったときの居場所を分けると、すっきりします。三つの城で確かめてみましょう。

殿様の家を探すなら、御殿を見る
「御殿」は、城主らが暮らしたり、政治の仕事や対面をしたりする建物です。たとえば名古屋城の本丸御殿は、初代尾張藩主・徳川義直の住まいと、藩の政治を行う場所として建てられました。
「天守」「御殿」「本丸」は、それぞれ指しているものが違います。
| 言葉 | 何を指す? | 今回の疑問との関係 |
|---|---|---|
| 天守 | 城を象徴する高層の建物。城ごとに防御や保管などの役割を持つ | 高い建物だから寝室があった、とは決められない |
| 御殿 | 居住・政務・対面などに使われた建物 | 殿様の生活を知る手がかりになる |
| 本丸 | 城の中心となる区画の名称 | 建物の名前ではない。御殿は二の丸などにもあった |
悩む庶民一番高い部屋なら、景色もいいし殿様っぽいのに!

城で暮らし、政務を行うなら、寝る部屋だけでは足りぬ。家臣と会う場所や、仕事をする部屋も要るのじゃ。
出典:名古屋城「本丸御殿」、松本城「城下町の構造」、松本城「国宝に指定された天守五棟」
本丸・二の丸といった区画の名前を先に整理したい方は、こちらの記事で説明しています。

松本城には、居間も寝間もある御殿があった
松本城の本丸御殿には、御居間や御寝間がありました。名前を聞くだけでも、日々の暮らしが少し身近になります。
御殿は、殿様一家だけの家でもありません。松本城の公式解説によると、対面や儀礼を行う場所に加え、重臣が仕事をする部屋、台所などもありました。生活と政治を支える、いくつもの部屋がつながっていたのです。
現在は建物が残っていません。本丸御殿は1727年に火事で失われ、その後、政務の中心は二の丸御殿へ移りました。
天守は残っているのに、暮らしの舞台だった御殿は残っていない。なるほど、今ある建物だけ見ていると、殿様の家を見失ってしまうんだ! 御殿跡にも目を向けたくなります。
では、天守の「御座所」は何のため?
悩む庶民天守に殿様の席があるの? ほら、やっぱりそこが家なんじゃない?

公式には、城主が天守に入ったときに座を構えたと考えられる場所と説明されているよ。この説明だけで、日常の寝室だったとはいえないんだ。
松本城大天守の四階には、御座所(ござしょ)と呼ばれる場所があります。公式解説は、城主が天守に入った際の居場所と考えられること、客をもてなす場所ではないことを説明しています。
ここで、「天守に入る」と「天守で暮らす」を分けると、話がつながります。
- 住まいの手がかり:御殿にある居間・寝間など、日常生活のための部屋。
- 天守内の居場所の手がかり:城主が天守に入ったときのための御座所。
席があるから、寝起きもしていたはず。そう早合点したくなるところですが、居場所と住まいは別なんですね。

また、松本城公式の表現は「考えられている」です。誰が、いつ、どれほど使ったかまで確定した話としては扱わないようにします。
名古屋城では、殿様が御殿を引っ越した
名古屋城の本丸御殿は、1615年に徳川義直の住まいと政庁として完成しました。しかし、義直は1620年に二之丸御殿へ住まいと政庁を移しています。
その後、本丸御殿は、京都へ向かう将軍らを迎える宿泊所として使われるようになりました。

| 名古屋城の本丸御殿 | 主な役割 |
|---|---|
| 完成当初 | 藩主・徳川義直の住まいと政庁 |
| 義直が二之丸御殿へ移った後 | 将軍が京都への往復で泊まる御殿 |
同じ「本丸御殿」でも、時代によって使う人や役割が変わったのです。「殿様は必ず本丸御殿に住む」と覚えるより、その城の、その時代の住まいを確認する方が正確です。
名古屋城の現在の見どころは、別の記事にまとめています。

姫路城では、天守のそばに暮らしの跡がある
姫路城にも、天守と城主の生活の場を分けて考える手がかりがあります。天守のそばにある備前丸(びぜんまる)です。
姫路城の公式サイトは、ここを池田輝政が住んでいた場所と説明しています。客と会う対面所などもありましたが、建物は1882年の火災で失われました。
いまは広場でも、かつては部屋があって、人が暮らしていた。何もないように見えた場所が、急に気になってきませんか。「御殿跡」「対面所跡」という名前も、暮らしを想像する手がかりになります。
次のお城で、殿様の住まいを探してみる
「殿様は天守の一番上に住んでいた?」という疑問は、城の中にある建物を何に使ったかで見分ける入口になります。
今回見た城では、暮らしや政治の場は御殿にありました。一方、天守に城主の居場所が設けられた例もあります。城や時代をまたいで「天守には誰も入らなかった」「どの殿様も同じ暮らしだった」とまで広げることはできません。
次に案内図を見るときは、天守に加えて、御殿や御殿跡を一つ探してみてください。 居間、寝間、対面所という名前が、石垣の向こうにあった暮らしを教えてくれます。
出典確認:2026年9月6日。本文の図は役割を説明するための模式図です。
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こちらは、ある程度お城をめぐって、天守の美しさだけではなく、内部構造や城郭、土塁、石垣、門、櫓などお城を成している構造物に着目している方向けです!
より深くお城に対しての知的好奇心がわく内容になっており、これを見ながら巡ると、着眼点が「お城っていいな~」から「このお城を攻めるには/守るにはどうすればいい!?」と変わってきます!おすすめです!


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