福山城はなぜ駅のすぐ前にある?堀を埋めた鉄道と、城跡の変化

福山城を象徴する白い天守と手前の駅・新幹線、駅のすぐ前にある理由を問う表紙

福山城が駅のすぐ前にあるのは、明治時代に城の石垣の一部を取り払い、内堀を埋めて、山陽鉄道の線路と福山駅を設けたからです。城が先にあり、その城域へ後から鉄道が入ってきた、という順番なんです。

新幹線のホームのすぐ近くに、石垣と天守。福山城の写真や映像を見ると、その近さが気になりますよね。天守だけに注目していた目を少し広げると、そこには城の一部が、近代の交通の場へ変わった歴史が見えてきます。

駅前にお城がある、と思っていたけど……昔のお城の中に駅が入ってきたの?

そう考えると位置関係が分かりやすいね。天守だけでなく、堀や石垣に囲まれていた城全体を見てみよう。

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1891年、堀と石垣のある場所へ鉄道が入った

福山城博物館によると、福山城は1622年に完成しました。一方、福山市の鉄道史の解説では、山陽鉄道が福山まで延びたのは1891年9月です。城の完成から、約270年も後のことになります。

この駅の建設では、福山城の石垣を壊し、内堀を埋める工事が行われました。城を守るための空間だった場所が、線路や駅を置く場所へ変わったのです。

下の図では、その変化だけを取り出して比べています。城全体の正確な地図ではなく、堀・石垣と、後から入った鉄道との関係を見るための図です。

江戸時代の堀と石垣の一部が、明治時代に線路と駅の場所へ変わる関係を左右で示す図
城域の一部の土地利用の変化を示すAI生成の模式図。実際の縄張り・方位・距離、駅舎・車両・工事の復元図ではなく、堀全体を一度に埋めたことも意味しません。

なるほど、近くに見える理由は距離の数字だけでは分からないんですね。城の一部だった土地の使い方が変わったと知ると、駅の周囲まで城の歴史として眺めたくなります。

出典:福山市「入封400年記念シリーズ(10)」、福山城博物館「天守」

なぜ、わざわざ城の石垣を壊して通したの?

駅の建設が、誰からも歓迎されたわけではありません。福山市の解説には、藩の象徴である城の石垣を壊すことや、鉄道が町を分断することへの反対があったと記されています。その一方で、町の発展には鉄道が必要だと支持する人々もいました。

市は、当時の政府・軍部が敷設を強く重視していた事情に触れ、短いルートを早く敷くため、石垣の撤去と内堀の埋め立てが必要だったと説明しています。現在の便利な駅前の景色には、鉄道を急いで通す時代の判断と、町の側の意見の違いも重なっているのです。

ただし、この工事の説明から「福山城の堀が全部、1891年に一度に埋められた」とまで広げることはできません。ここで確認できるのは、鉄道と駅の建設に伴い、石垣や内堀の一部が改変された経緯です。

出典:福山市の解説「用地買収」「石垣を壊して内堀を埋め立てる」の箇所

城の完成・鉄道開通・今の天守は、別の時代

駅と天守が一緒に写っていると、どちらも昔から同じ姿で並んでいたように感じるかもしれません。ここは、城の始まりと、現在見える建物の年代を分けるとすっきりします。

城の完成は1622年、鉄道が福山へ達したのは1891年。その後、旧天守は1945年の福山空襲で焼失し、現在の天守は1966年に再建されました。いまの天守が建った時点では、すでに福山に鉄道が通っていたわけです。

1622年の福山城完成、1891年の鉄道到達、1945年の旧天守焼失、1966年の現在天守再建を分けた年表
築城・鉄道開通・焼失・再建を分けたAI生成の模式図。年代の間隔は比例せず、天守・駅舎・車両や焼失後の様子を正確に復元した図ではありません。

同じ一枚の景色にも、江戸時代に始まった城、明治時代に入った鉄道、昭和に再建された天守という、別々の時間が重なっています。城の築城年を、そのまま現在の天守の建築年にしてしまわないことがポイントです。

「城が先、駅が後」だけど、いま見える天守はさらに後なんだ!

城という場所の歴史と、そこに立つ建物の歴史を分けると、写真の見え方も変わるね。

天守の北側が黒い理由と、後年の外観復元については、福山城はなぜ北側だけ黒い?で紹介しています。この記事では、駅との近さを生んだ土地の変化に注目しています。

出典:福山城博物館「天守」(築城・焼失・再建)、福山市の鉄道敷設史

写真や古地図では、天守の外側まで見てみよう

福山市が2023年に紹介した駅前広場協議会の分科会でも、城郭の中に駅があると伝わる空間にしたい、という意見が出ています。これは、城と駅の関係を考える手掛かりになります。

福山城博物館の「福山城物語」では、江戸・明治・昭和の古地図を比べられます。天守の位置だけを探すのでなく、城を囲んでいた範囲と、後からできた線路・駅の位置を見比べてみてください。なお、ここで挙げる2023年の意見は、駅前広場の整備がすべて完成したという案内ではありません。

「駅前に立派な天守がある」から、もう一歩外へ。現在の駅や町の場所まで含めて見ると、城が近代都市へ変わっていく途中の姿が見えてきます。

城の本丸・二の丸・三の丸がどのような場所かは、お城の本丸とは?二の丸・三の丸との関係も参考になります。

出典:福山市「福山城の遺構を生かした駅前広場とは」、福山城博物館「福山城物語」

城全体のつくりを、もう少し知りたい方へ

城の配置図を見て、天守の外側にも目が向いたら、構造を図解した入門書や城巡りのガイドも役立ちます。以下は学びを広げるための書籍紹介です。福山駅の建設経緯を裏付ける資料は、本文中で示した市と博物館の原典です。

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資料確認日:2026年10月20日。表紙と本文図は城なび制作のAI生成の模式図です。実景・実測・特定時点の城郭、堀、駅舎、車両や工事の様子を正確に復元した図ではありません。

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